12月 3, 2023

    シンガポールの在宅勤務(WFH)から分かる3つのこと

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    香港へ就職する人が大幅に減り続けている

     21日間もの検疫は香港へ家族と共に渡航する就業者の足を遠のかせている。South China Morning Postが報道した。  COVID-19の規則が絶えず変化していることにより、香港への渡航はますます困難になっている。フィリピン出身の28歳のBernは5月に香港企業からのオファーを受けたが、フィリピン航空とセブパシフィック航空の渡航者から陽性者が出たことにより2週間の着陸禁止措置を受けた。就労ビザはこの12月で切れてしまう。  「その街で働くためだけに狂気を感じたり、怒ったりすべきなのかは分からない」  香港はパンデミックの影響を最小限に抑えることに成功したものの、国境を再開することには極めて消極的だ。リスクが高い国からは21日間の検疫を実施しているし、全ての国のワクチン接種記録を認めているわけでもない。  入国管理局は発行された就労ビザが大幅に減少したことを明らかにしている。今年の1月から6月までに発行された就労ビザは6,471件だったが、昨年の同時期は7,717件であった。2019年には年間で35,194件ものビザが発行されたことを考えれば、大幅な減少と言える。  特に米国人に対する就労ビザは昨年70%激減した。豪州や英国からのビザもそれぞれ67%、65%減少した。それにより才能ある外国人が香港から流出することになった。  転職企業Relo SmartのディレクターであるLars Kuepperは「家族と一緒に海外から採用者を転勤させることは難しい。3週間の検疫があるからだ」と話している。ほとんどの人材は英国やシンガポールに流れるという。  香港が厳しい検疫を緩和することはおそらくないだろう。中国本土との往来を何より優先しているからだ。法律だけでなく人材や資本まで離れてしまえば、香港は国際金融センターとしてのポジションを失うことになる。✒

    中国人の若者が民間企業を避け公務員になりたがる理由

     中国での生活費の高騰や不確実性の高まり、そして合理的でない長時間労働などを受けて新卒者が公務員を選ぶ傾向が強まりつつあるようだ。South China Morning Postが報道した。  25歳のAdam Xuは11月に実施される国家公務員試験のために、少なくとも1日12時間は学習している。彼の希望は故郷の広東省に戻り公務員になることだ。  公共部門で仕事をしたいという意欲が若者の間で高まっている。1970年代後半の改革開放期に進められたXiahai、あるいは"going down to the sea"という運動とは正反対の動きだ。若者の親世代は公務員ではなく起業家となり、ビジネスチャンスの"海"を探求するために公務員を辞める人々も多かった。  「今の海には十分な水がない。それどころか私達にはプールもない」とXuは述べる。  中国の新卒の若者が"鉄板碗"として知られる政府の仕事を奪い合っている。保証された雇用、安定した収入、予測可能な未来のためだ。昨年の国家公務員試験には合計157万人の志願者が殺到したが、ポジションはわずか25,726人分だけだった。60人に1人しか受からない狭き門だ。  最も人気があった国家統計局の広東支部は、実に3,334人に1人という凄まじい倍率だったという。  新卒者が公務員を希望する割合は急激に増えている。就職活動サイトのZhaopinによれば、昨年の2倍の割合となる11.4%が政府に就職したいと述べている。国営企業での就職を求める卒業生も36%から42.5%へと増加した。  「パンデミックの影響で、安定を追求する精神が強くなっているようだ」とZhaopinの広報担当のWang...

    中国の労働力は高齢化で予想外に早く減少する

     中国政府によると、中国の労働力は今後5年間で3,500万人減少するという。それを受けて定年を引き上げる方針を打ち出した。South China Morning Postが報道した。  10年に1度の人口調査によれば、2020年には15~59歳の年齢層が8億9,438万人となった。全人口の63.35%に該当する数字だが、2010年と比べれば6.79ポイントも減少している。  中国政府は2021年中に1,100万人以上の雇用を追加する通年目標を設定した。そのうち900万人が卒業生となる。だが中国の人口増加ペースは落ち、出生率は60年ぶりの低水準となっている。  専門家は長い間、中国政府に労働力の減少と急速な高齢化社会に対応するべきと警告を発してきた。今後数年間で経済発展を大きく圧迫すると予測されている。  加えて失業率も大きな問題となった。公式に調査された失業率は今年6月時点で5%だが、自営業者1億4,900万人と移民労働者3億人を含まないことから信頼できない統計と言われている。ほとんどのエコノミストが失業の影響を過小評価してると指摘している。  幅広い雇用指標を提供する先進国とは異なり、中国は特定の数値でのみ失業率を推定してきた。この統計手法には欠点があるとSouth China Morning Postは述べる。  中国政府は失業した際に政府に登録される都市労働者のデータを2018年に公開したが、そのデータからは域外から移住してきた移民労働者の統計は省かれている。さらに16歳から59歳の間でなければ失業者としてみなされない。  2008年から2009年の間に発生した金融危機では2,000万人以上の移民労働者が失業したが、表の失業率の数字が一切変わらなかったことから現実離れした数字となってしまったようだ。  中国の定年は過去40年間男性は60歳、女性は55歳、ブルーカラーの女性は50歳と規定されてきた。だが李克強首相は2021年3月の全人代で「法定の定年は段階的に引き上げられる」と述べ大きな批判を巻き起こした。労働力の減少は政策の結果であり、その責任を労働者の定年延長に転嫁するのは不公平との主張がみられた。  中国の失業率隠蔽の実態が浮き彫りになった形だが、それに加えて労働力減少となれば二重に苦しむことが想定される。統計から除外された膨大な高齢失業者や移民労働者は無視できないレベルで増えている。何も手を打たなければ経済はあっという間に衰退してしまうだろう。✒

    アップルはデルタ型の拡大でオフィス勤務の時期を遅らせる

     アップルはオフィスに従業員を戻すことに関して他のハイテク巨人よりも積極的だったが、米国でCOVID-19症例が増加していることを受けそのタイミングを遅らせるようだ。Gizmodoが報道した。  Bloombergが話を聞いた情報筋によれば、アップルは地域の感染率と健康制限の変化に対応するために、10月かそれ以降にオフィスへの復帰を延期することにした。これまでは9月から少なくとも週に3日間のオフィス勤務再開を計画していた。  COVID-19の波がロサンゼルスのような一部地域でマスク義務を復活させたことが、オフィスへの復帰を停止せざるを得なくなった主な理由だという。  オフィス勤務を再開させるかは各社で対応が異なる。フェイスブックは自宅で仕事を続けるか、半分だけオフィスに来るかを従業員に選ばせている。グーグルに至っては従業員が好きなだけリモートワークを続けることができると決定した。  ニューヨークの金融業とは異なり従業員のリモートワークに元々寛容なGAFAMだが、それに加えカリフォルニアでのCOVID-19の広がりも無視できなくなっている。オフィスへの復帰は来年以降になるかもしれない。✒

    デジタルノマドに最適な都市ランキングで上海が最下位になる

     75の都市をランク付けした結果、メルボルンやドバイ、ロンドン、シンガポールなどが上位10位にランクインした。South China Morning Postが報道した。  世界的な在宅勤務の傾向が強まる中、いわゆるデジタルノマドに優しいビザを提供する政府は高い評価を得ている。COVID-19の制限により多くの人が自宅で仕事をすることを余儀なくされているが、何年もの間遠隔地で生活し働いている人もいる。  デジタルノマドは生活費が低く、ソーシャルネットワーキングの機会などがあることから一部の人はインドネシアのバリ島やタイのチェンマイなどの場所を支持している。だが今回のランキングでは上位には入らなかった。  ベルリンを拠点とする住宅プラットフォームのNestpick.comによる新しい調査では、オーストラリアのメルボルンが1位となっている。この調査では「コストとインフラ」「法律」「自由度」「住みやすさ」などの16の要素を考慮に入れて、世界の最も住みやすい75の都市の在宅勤務への適合性を評価した。  2位から4位はドバイ、シドニー、エストニアのタリンとなっている。外国人が追加の許可なしに遠隔地で働くことを可能にしている都市だ。  デジタルノマドビザがなくてもランクが高いのは東京とシンガポールだ。家賃が高いにも関わらず、だ。それぞれ6位と7位にランクインした。一方香港は14位で、家賃の高さや大気汚染、騒音などの環境面で最悪の評価を得ることになった。  75都市で最悪だったのはワースト順に中国の上海、モロッコのMarrakech、コロンビアのMedellinだ。上海が世界最悪の都市になったということだ。これは環境汚染や法律の自由度、デジタルノマドビザの不在などが関係しているものと思われる。  デジタルノマドビザがない国で最も順位が高かったのは5位のロンドンだった。カナダにも同様のビザはないがランキングは高く、9位にモントリオールと12位にトロントが入っていた。一方米国は13位にシカゴだけがランクインしている。パンデミックを契機に、様々な国に滞在してみるのもいいかもしれない。✒

     すべての上長やマネージャーは、労働生産性の真実について知る必要がある。オフィスにいるだけで生産性が向上するわけではないことを。The Straits Timesが報道した。

     先月末、シンガポール政府から在宅勤務を標準化するようにという勧告が出たにも関わらず、多くの雇用主がスタッフにオフィスに戻るように求めた。彼らは従業員が1日の仕事を自宅でできるかどうかが信用できなかったからだ。

     上長が信頼できない怠け者を沢山雇った可能性があるものの、従業員としても自分の役割を果たして信頼を勝ち取る必要がある。そうしなければ昇進やボーナスを受け取ることができないかもしれない。最善を尽くしたなら、別の仕事を探すことも必要だ。

    1. 身だしなみと才能の発見

     多くの専門家が口を揃えて主張するのは、パンデミックを通じて従業員が自宅から非常に多くの仕事を達成できると気付いたことだ。例えば今読んでいるThe Sunday Timesは、去年の初めからほぼ完全に在宅勤務のジャーナリストによってまとめられている。

     STのジャーナリストは在宅勤務が世界的なトレンドになるずっと前から、外国特派員やコピー編集者として”世界中の自宅”で仕事をしているという。毎日の具体的な目標があり、誰もが自分の役割を果たせば十分に可能なのだ。結果さえ出せば上長が現在の居場所を尋ねることもない。

     在宅勤務は販売やプロジェクトの目標などを全員に与えれば機能する。誰もが自分自身で仕事をすることで、社内政治の悪しき習慣や怠惰でパフォーマンスが低い人を減らすことに繋がる。

    2. コストと時間の節約

     かつては高級オフィススペースを多く占めていた経営幹部の部屋だが、もはや今のトレンドではないと言える。グローバル金融機関の多くのトップは部屋をオープンなオフィスや会議室に変えた。それによりオフィススペースが削減されれば、年間数百万ドルの賃貸料や光熱費の節約に繋がるからだ。

     例えばスタンダードチャータード銀行は、今年の終わりまでに世界中の上級スタッフが使用する881のオフィス全てを会議室に変えることを目指している。最高財務責任者のAndy Halfordは「専用オフィスのコンセプトは急速に歴史に委ねられ始めている」と語った。

     海外出張を減らすこともできる。直接会うことが絶対的ではない限り、多くの経営幹部は世界中を飛び回ることをせずバーチャルな会議を好む。

    3. 新しい働き方

     一部の従業員は、在宅勤務は終了のタイミングが難しいことから長時間労働を意味すると不満を漏らしている。定例のオフィス会議が変更されておらず、通常の仕事を営業時間外にやる必要が生じている。

     したがって、上長は全体的な作業プロセスも検討して、従業員が生産性の向上とワークライフバランスという2つの重要な結果を達成できるようにする必要がある。

     例えば定期的なチームミーティングを開催しないこと。明確な目的と結果がない限り、会議は生産的ではないことを知る必要がある。様々なプロジェクトについて話し合い、意見を求めたい場合は関連するメンバーとのみ短い会議を実施すればいい。

     従業員が在宅勤務をすることは、独立したオペレーターへの昇格を意味する。時間をどのように過ごすかを細かく制御できる。目標と成果について上長と話し合うことで、どのように仕事をするかを自由に決めることができるだろう。9時から5時までのルーティンにとどまらないかもしれないが、最も生産的な方法を見つけ出せるはずだ。

     在宅勤務は世界的に見てもさほど定着はしていない。先進国だろうが途上国だろうが、ケースバイケースでオフィス出社を求める企業もまだまだ多い。完全な在宅勤務としてしまうと、上長や他のメンバーから対面で学べる機会が減るという懸念もある。週1や週2、あるいは月1回というような程よいペースの出社が望ましいように思える。✒