英大手不動産企業Knight Frankが、6月3日にアジア太平洋地域各国の不動産市況をレポートした。
1.豪州
Net Zero goal for new Sydney CBD buildings from 2026
シドニーにおける2026年からのCBDビルの新しいゼロ目標
シドニー市は、今後ホテルやショッピングセンターを建設または再開発するための開発アプリケーション(DA)は、今後豪州国立建築環境評価システム(NABERS)で最低4つ星を獲得する必要があると提案している。オフィスの場合は最低5つ星以上となる。
2026年からすべての商用DAはどのようにして炭素排出量ゼロを達成できるかを実証する必要がある。この変更が適用された場合、ESGの懸念と将来のシドニーの持続可能な開発に重点が置かれることになる。
ビクトリア州は地価税の引き上げにより賃貸用投資環境がリスクにさらされている。土地税率の引き上げを発表した最近の州予算に続いて、Build to Rent(BTR)プロジェクトの優先目的地としてのビクトリア州の地位が疑問視されている。ビクトリア州はBTRプロジェクトの土地税を50%割引にすることを発表していたが、引き上げにより部分的に相殺することになる。
この変更により、ビクトリア州で目標リターンを達成することが困難になり、代わりにニューサウスウェールズ州に多くの資本が割り当てられる可能性がある、と著名なプレイヤーのGreystarなどが述べた。
2. 中国本土
中国本土の住宅市場は上昇を続けている。上位70都市の新築住宅価格は4月に前月比0.48%上昇し、3月に記録された0.40%から加速した。Tier 2の都市の価格は、2021年初頭に制限がさらに厳しくなったTier 1の都市に比べて力強い成長を見せた。住宅価格の上昇は今後も現在のままであると予想され、政府の最近の動きを見れば制御不能な市場が発生する可能性は低いと考えられる。
3. 香港
香港地元のJVが記録的な入札でCauseway Bay(銅鑼湾)の珍しい土地を取得した。価格は約198億香港ドル、あるいは1sqft当たり18,400香港ドルだ。これは110香億港ドルから172億香港ドルという市場の見積もりを15%以上上回る。1997年以降政府によって販売されたCauseway Bayの最初の商業サイトだ。
この場所はHysanの既存のLee Gardens高級ショッピングセンターの向かい側に配置されていて、2027年ごろに100万m2のGFAビルが完成すれば、開発者にとっては相乗的な機会となる。香港の商業市場は数年前から圧力を受けているものの、強気の入札は市場の前向きな見通しを示しておりサイクルの底が近付いている可能性がある。
4. マレーシア
マレーシア国立銀行は5月の会合で、翌日物政策金利(OPR)を1.75%に据え置くことを決めた。この決定は多くのエコノミストに期待されていた。OPRはマレーシアがCOVID-19との全面的な戦いに入ったことにより歴史的な低水準にとどまっている。
この動きは、過去12カ月間に実効家賃が下落した商業施設の家主や住宅所有者の救済になるだろう。2021年のIMF予測のGDP6.5%成長が引き下げられるリスクを考えると、金利は年末まで維持されるものと思われる。
5. タイ
タイの不動産情報センター(REIC)によると、バンコクの地下は21年の第1四半期に前期比2.20%下落し、2012年のインデックス開始以来初めての四半期ベースでの下落となった。5年間の平均よりもペースは遅いものの、前年比では依然として11.2%の成長となっている。
この低下はバンコクの開発者が先行きの見通しに慎重になり始め、その結果新しいプロジェクト開発のための土地購入を遅らせたことを示している。ここ最近COVID-19の感染例が増加していることから、経済再開と回復はさらに遅れると思われ、短期的には住宅需要を圧迫する可能性がある。在庫を一掃したい開発者は、購入者にインセンティブを提供することを検討している。
6. シンガポール
政策立案者からの警告にも関わらず、シンガポールの開発業者の最近の土地入札は民間住宅市場の強気な見通しを示している。郊外のAng Mo Kioの土地入札の最高入札額は1 sqft当たり1,118シンガポールドルで、他の14の業者を打ち負かすことになった。次に高い入札よりも6.3%大きい。
このプロジェクトは、この地域の新しい価格ベンチーマークとなる2,000シンガポールドル / sqftの販売価格で市場に出回る可能性がある。開発者がここ数カ月で在庫の減少と限られた土地販売に直面したことから、入札者は強気の側にあった。したがって今後数カ月の土地売却価格は引き続き上昇し市場のセンチメントに打撃を与えると予想される。
豪州や中国は好調、香港やシンガポールは強気の入札、マレーシアやタイは感染例の増加による金融緩和政策や土地価格の下落という三者三様の状態となっている。COVID-19の抑制が想像以上に経済の回復に直結することが示された形だ。✒
