トリウムを動力源とする原子炉は、冷却材として水を必要としない。そのため風力発電所や太陽光発電所のように遠隔地の砂漠に設置できるという。South China Morning Postが報道した。
この技術はウランを動力源とする原子炉よりも安全となる可能性があり、エネルギー安全保障に関する中国の懸念を払拭するかもしれない。液体トリウムを動力源とする溶融塩原子炉は、漏洩が発生した場合に溶融トリウムを急速に冷却して固定化させ、放射能の拡散も少なくできるという。
最初の商用原子炉の工事は2030年までに完了する予定だ。中国の中部や西部の砂漠、平原にいくつかの原子炉が建設されるようだ。
トリウムはウランと異なり核兵器の製造に使用できないことから、一帯一路イニシアチブに署名した国々のためにこの原子炉技術を活用する可能性がある。
「小規模原子炉には効率、柔軟性、経済性の面で大きな利点がある。クリーンエネルギーへの移行において重要な役割を果たすだろう」と上海応用物理学研究所のYan Rui教授は論文で述べた。
プロジェクトに関与した科学者によれば、溶融塩原子炉の推進は2060年までのカーボンニュートラル化を目指す習近平主席の発表から始まったとされている。この技術は空母や潜水艦などに新しいエネルギー源を供給する可能性がある。
液体塩を動力源とする原子炉の概念は1940年代から存在していて、次の10年で米国はこの技術を燃料とする爆撃機の実験プログラムを開始した。1960年代にはフランス、旧ソ連、日本なども同様のプログラムを開始した。
この次世代型原子炉は日本では「トリウム溶融塩炉」として広く認知されているが、日本語では情報が少なく実験段階にあるとの認識だ。早くとも2030年に建設が完了するとのことで、今すぐ使える技術ではない。中国は残り9年で環境破壊を食い止める方法を考えるべきである。✒
