中国と豪州の冷え切った関係により、中国本土のハイテク大手企業が豪州を有利な投資先とは見なさなくなっている可能性があるという。シドニーなどの都市の空室率はパンデミックの最中に急上昇したが、もし中国のハイテク企業が進出していれば緩和されていたかもしれない。South China Morning Postが報道した。
豪州のオフィス不動産市場はコロナパンデミックの影響を受け、在宅勤務をする人が増えていることからシドニーなどの都市の空室率が急上昇している。他の先進国とさほど変わりないものの、豪州政府が北京を怒らせなければそれほど悪くなかったかもしれない。
シンガポール国立大学不動産都市研究所のSing Tien Foo所長は、最近の豪州と中国の政治的緊張は中国のハイテク企業による豪州進出の障害になる可能性があると述べた。「中国のハイテク企業によるオフィススペースの拡大は、短期的には起こらないだろう」と付け加えた。
不動産コンサルタント企業のColliersによれば、ハイテク企業は2025年までにアジア太平洋のオフィススペースの20%に相当する550万平方メートルを占める可能性が高い。そのうち中国企業が400万平方メートルだ。
Knight Frankによれば、シドニーではオフィス空室率が2019年の3%から2021年第1四半期には8.3%に急上昇したという。アジア太平洋地域の調査責任者を務めるChristine Li氏は、中国企業がその状況を助ける可能性があったと述べた。
昨年豪州政府が8,000万豪ドル(6,200万米ドル)相当のシドニーのオフィスタワー購入への対応を遅らせ、中国の民間投資家グループからのオファーが撤回された。
豪州の損失はシンガポールの利益になる可能性がある。シンガポールのオフィス空室率は2019年の9.3%から2021年第1四半期には11%に上昇したが、この期間は豪州よりはいい結果となっている。実際シンガポールではオフィスや事業拠点を設立する中国のハイテク大手企業が増加している。
世界最大の電子商取引プラットフォームを持つアリババグループは、去年シンガポールで50階建てのプライムオフィスAXAタワーの50%の株式を取得した。
シンガポールは豪州と同じ英語圏ということで、中国ハイテク企業の乗り換え先としては悪くないように思える。華僑の国であり文化的にも近い。シンガポールの中国化が進むという意味では、東南アジアにとってよくない流れと言える。✒
