【アンダマン/Alex Rodriguez Chloe】タリバンがアフガニスタン首都カブールを制圧し、大統領は国外に退避した。米国大使館などではヘリによる退避が続いている。
7月末にタリバン幹部と中国外相のWang Yiが天津で会談を実施したが、この時に何らかの軍事的支援が約束されたのではないかという憶測が流れている。だが実際にはタリバンはパキスタン諜報機関の軍統合情報部(ISI)が支援していることで有名だ。
パキスタンは表向きはタリバンやパキスタン・タリバン運動(TTP)との関与を否定しているものの、ISI諜報員の電話記録が武装勢力への支援の証拠になっているとアフガニスタン政府の元上級政策顧問のDavood Moradianは話す。Reutersによれば、Davoodはその情報を各国の情報機関にも提供したようだ。
パキスタンでは今年7月に中国人技術者を狙った爆発事故が起きており、TTPが犯行声明を出している。情報筋によれば、パキスタンの外相がアフガンとインドの情報機関も犯行に加担したと話しているという。タリバンとの関係性を探られたくない意図が見え隠れする。
仮に中国がタリバンにより新しく樹立された政権を支持するならば、パキスタンと共にテロ支援国家指定される危険性が高まる。一帯一路の関係でアフガニスタンを押さえることは重要な課題であり、タリバンとの協力関係でアフガニスタンを作り変えることそのものは国家的戦略にかなう。タリバンにとっても中国の投資を誘致することは資金源確保の面でメリットがある。
中国にとってタリバン政権との危うい関係は甘美な誘惑であり、駐留米軍の撤退により引き起こされた中東の混乱を収束させることで覇権国の地位をも狙える可能性を秘めている。タリバンは中国が禁じる薬物の栽培をつい最近開始したにも関わらず、だ。
中国は一帯一路構想をスムーズに進めるためにも、タリバン新政権が新疆ウイグル自治区に関する問題に干渉しないことを確約しなければならない。タリバンは東トルキスタンイスラム運動(ETIM)との関係が深いとされている。ウイグル人をアフガニスタンで軍事訓練に参加させた疑いが持たれている。
仮にタリバンが新疆ウイグル自治区の同胞を見捨てて中国との関係を深めるならば、シャリーアに基づくイスラムの体制により人々を救うという教義の否定となるだろう、と別の情報筋は話す。中国としても、イスラム系住民への弾圧を強めるために別のイスラム原理主義勢力との関係を深めるという大きな矛盾を抱えてしまう。
中国政府は今のところ声明を出していない。ロシアと連携しながら地域の安定を求める程度にとどまると思われる。
最悪のシナリオは、力をつけたタリバン新政権がパキスタンとの関係を悪化させることだ。パキスタンは核保有国であり、タリバン新政権がパキスタンまでもを制圧してしまえば地域は一気に不安定化する。中国はおろかロシアまでもが大慌てで対処しなければならなくなるだろう。結局はいい時期に撤退を完了させた米国の一人勝ちという結論になりかねない。✒
[翻訳/編集 WN]